手塚治虫が「嫌い」と公言した問題作『アラバスター』とは?
漫画の神様・手塚治虫自身が「救いようがない」として嫌悪感を露わにした、暗黒のSF犯罪サスペンス『アラバスター』。全3巻という読みやすいボリュームながら、そのニヒルな世界観と衝撃的な展開は、読者の心に深い爪痕を残します。2022年にはミュージカル化もされ、今なお「黒い手塚」の代表格として再評価が進む異色作です。
美への復讐を誓う透明人間・アラバスターの悲劇
物語の主人公は、人種差別と冤罪によって名誉も愛もすべてを奪われた元金メダリストの黒人青年。彼は獄中で手に入れた「物体を透明にする光線銃」を使用しますが、副作用により皮膚だけが透け、醜い筋肉や血管が剥き出しの姿となってしまいます。
絶望した彼は自らを「アラバスター」と名乗り、世の中の「美しいもの」すべてへの復讐を誓います。透明人間の少女・亜美や、冷酷非道なFBI捜査官ロック・ホームを巻き込み、破滅へと突き進む悲しき怪人の運命。正義とは何か、美醜とは何かを問いかける衝撃のサスペンスが展開されます。
なぜ『アラバスター』は心を抉るのか?3つの魅力
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「正義」や「美」を否定する徹底的なニヒルさ 作者自身が忌避したほどの「救いのなさ」が、本作最大の特徴です。勧善懲悪のヒーロー像とは真逆を行く展開は、読む者に「正義とは何か」「美醜とは何か」という根源的な問いを突きつけます。きれいごと一切なしの読書体験がここにあります。
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冷酷非道な美形悪役ロック・ホームの存在感 手塚スターシステムの中でも屈指の悪役人気を誇るロックが、本作ではFBI捜査官として登場します。美醜への異常な執着を見せ、主人公のアラバスター以上に狂気的な行動で物語を牽引。その冷たく美しい「悪の華」としての立ち振る舞いは圧巻です。
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全3巻で完結する密度の濃さと読みやすさ 長編大作が多い手塚漫画の中で、全3巻できれいに完結するため、休日の数時間で一気に読破可能です。短い巻数の中に、現代社会にも通じる差別や偏見といった重厚なテーマが凝縮されており、高い満足感が得られます。
ハッピーエンドでは物足りない人へ
- 「黒い手塚」ファン 『MW(ムウ)』や『バンパイヤ』のような、人間の業や闇を描いた手塚作品が好きな人にはたまらない一作です。
- 重厚な物語を求めている人 予定調和なハッピーエンドではなく、読後も心に残り続けるような、考えさせられる物語を求めている人に最適です。
- 短時間で深い名作に触れたい人 完結済みで巻数も少ないため、手軽に、しかしガツンとくる作品を読みたい漫画好きの方におすすめします。