桂正和が描く幻のヒーロー『超機動員ヴァンダー』とは?
『ウイングマン』や『I”s』、そして『ZETMAN』など、数々のヒット作を世に送り出してきた巨匠・桂正和。そのキャリア初期、80年代の週刊少年ジャンプ黄金期に描かれた異色作が本作です。全2巻という短さながら、「男女合体」という斬新なコンセプトと圧倒的な画力で、コアなファンの間で「早すぎた名作」として語り継がれています。現在は電子書籍で手軽に読むことができ、その独特な設定の妙を再評価する読者が増えています。
恐怖症の青年と美少女が一つに!?『超機動員ヴァンダー』のあらすじ
物語の舞台は、謎の宇宙人「惑星人」による侵略の危機が迫る198X年の地球。これに対抗すべく警視庁に設立された「地球外惑星人犯罪部」は、男女の愛のエネルギーを動力源とする最新鋭の強化服「Pウエアー・ヴァンダー」を開発します。
しかし、そのパイロットに選ばれたのは、重度の女性恐怖症を持つ青年・弥紫(みなと)と、並外れた知能を持ちながらも感情の起伏が激しい少女・みなほでした。相性最悪とも言えるこの二人が、襲い来る惑星人から生き残るためには、物理的に「一つ」になり、ヴァンダーへと変身して戦わなければなりません。
弥紫の驚異的な運動神経と、みなほの的確なサポートが融合したとき、ヴァンダーは無敵の力を発揮します。しかし、変身を維持するためには二人の「信頼」と「愛」が不可欠。反発し合いながらも、生死を懸けた戦いの中で変化していく二人の関係性。地球の命運を懸けた、もどかしくも熱いバディ・アクションが展開されます。
設定が早すぎた?本作が一部で熱狂的に支持される3つの魅力
-
「愛の力」が戦闘力に直結するシステム 男女が合体して戦うという設定に加え、二人の親密度や信頼関係がパワーに変換されるギミックが秀逸です。愛が深まれば強くなる反面、些細な喧嘩や怒りで変身が解けてしまうという制約が、単なるアクションに留まらないドラマチックな緊張感を生み出しています。
-
桂正和クオリティの洗練されたデザイン 連載当時から既に完成されていた桂氏の画力は注目に値します。機能美を感じさせるスタイリッシュなヴァンダーのスーツデザインはもちろん、ヒロイン・みなほをはじめとするキャラクター描写のクオリティは、後の『電影少女』などに通じる瑞々しさに溢れています。
-
衝撃的な必殺技「Vα」「Vβ」のビジュアル 本作を語る上で外せないのが、必殺技発動のプロセスです。クリスタルロッドを自らの胸や肩に直接突き刺してエネルギーを解放するという描写は、視覚的に非常にインパクトがあり、当時の読者に鮮烈な印象を残しました。その痛々しくも美しいビジュアルは、現在の視点で見ても非常に独創的です。
『ウイングマン』や80年代ジャンプが好きなら!こんな人におすすめ
-
桂正和作品のルーツを辿りたい人 『ウイングマン』のヒーロー要素と、後のラブコメ作品で見せる繊細な描写、そして『ZETMAN』に通ずるSF的な重厚さ。その原石とも言える要素が詰まった本作は、作家の変遷を知る上で重要な一冊です。
-
一癖ある変身ヒーローものを求めている人 単なる勧善懲悪では終わらない、男女の機微が戦闘を左右する特殊なギミックを楽しみたい方に適しています。打ち切りゆえの疾走感と、未消化ながらも想像を掻き立てる伏線の数々は、短編ならではの独特な読後感を残します。
-
短時間で濃厚な80年代の空気を味わいたい人 全2巻(文庫版では1巻)というボリュームで完結しているため、一気読みに最適です。80年代ジャンプ特有の熱量と、少し大胆なSF設定が凝縮された濃密な時間を体験できます。