『HAL』とは? 『まんがサイエンス』著者が描く“科学詐欺”ギャグ
『HAL』は、『まんがサイエンス』でおなじみのあさりよしとお氏が描く、嘘と真実が巧みに入り混じるサイエンス・ギャグ漫画です。学習漫画のような知的な顔をして、その実態は読者を煙に巻く「科学詐欺」のオンパレード。ワニブックスから全2巻(新装版では全1巻)が刊行されており、物語はきれいに完結しています。
本作は、単なる知識の伝達を目的とした漫画ではありません。科学的な用語や理論をもっともらしく解説しながら、最終的にはブラックユーモアやナンセンスなギャグへと着地する、大人のための知的遊戯と言えるでしょう。「この作品には一部真実が含まれている場合があります」というスタンスで描かれる本作は、読む者のリテラシーとユーモアセンスを心地よく刺激します。
あらすじ:マッドサイエンティストと女子高生の奇妙な実験室
とあるビルの屋上にひっそりと存在する、怪しげな研究所「HAL(はいぱあ・あかでみっく・らぼ)」。そこは、自称マッドサイエンティストの希印(きじるし)と、正体不明のホムンクルスたちが住処とする、常識外れの空間でした。
ごく普通の女子高生・リカは、通学途中にこの研究所へ迷い込んだことをきっかけに、希印の助手として無理やり実験に巻き込まれることになります。生命の誕生から宇宙論まで、扱うテーマだけは高尚なものの、そこで繰り広げられるのは奇想天外な実験の数々。もっともらしい理屈でリカを言いくるめる希印ですが、その実験は決まって斜め上の方向へと暴走していきます。
魅力・深掘り:なぜ『HAL』は読む者の知的好奇心を刺激するのか?
「嘘の中に真実が?」読者を試す知的エンターテインメント 本作の最大の特徴は、学習漫画のフォーマットを借りて平然と嘘をつくスタイルにあります。「科学的にありそうな解説」が展開されるため、読んでいる側は「へぇ、勉強になるな」と思った矢先に、トンデモ理論で裏切られることもしばしば。情報の真偽を見極めるスリルと、あえて騙される快感は、本作ならではの知的な遊びです。
『まんがサイエンス』の裏側? 毒気たっぷりのセルフパロディ 著者の代表作である『まんがサイエンス』が「表」の顔だとすれば、本作はまさに「裏」の顔。教育的な配慮は一切なく、あさりよしとお氏の持ち味であるシニカルな視点とブラックユーモアが全開です。「正しい科学」を教える縛りから解放された著者が描く、自由奔放で少し意地悪な世界観は、一度ハマると癖になる劇薬のような魅力があります。
ガチな科学ネタを笑いに昇華する手腕 シュレディンガーの猫、ドップラー効果、インフレーション理論など、SFや科学好きなら反応せざるを得ない本格的なテーマが次々と登場します。しかし、それらは高尚な考察のためではなく、あくまでギャグの前フリとして消費されます。難解な概念を独自の解釈で噛み砕き(あるいはねじ曲げ)、予想外のオチへと繋げる構成力は圧巻です。
ターゲット:理屈っぽい笑いが好きなあなたへ
あさりよしとお作品のファン 『まんがサイエンス』や『宇宙家族カールビンソン』などで見られる、独特のメカ描写や科学パロディ、そしてシニカルな作風が好きな方には必読の一冊です。
理屈っぽいギャグや、SF・科学ネタのパロディが好きな人 ただ笑えるだけでなく、元ネタとなる科学知識やSF設定を知っているとより深く楽しめる構造になっています。「そんなわけあるか!」とツッコミを入れながら読むのが正しい作法かもしれません。
「学習漫画」のフォーマットで大人が楽しむブラックジョークを読みたい人 子供向けの学習漫画にはない、大人だからこそ笑える皮肉や毒気が満載です。全2巻(新装版1巻)で完結しているため、週末の暇つぶしや、少し頭を使った(気になれる)読書体験を求めている方に最適です。