『サザエさん』の長谷川町子が描くブラックユーモアの金字塔『いじわるばあさん』
国民的ホームドラマ『サザエさん』で知られる漫画家・長谷川町子が、あたたかなヒューマニズムの世界とは対照的に、「人間の本音や毒を描きたい」という衝動から生み出した傑作、それが『いじわるばあさん』です。
昭和の連載開始から現在に至るまで、アニメ化やテレビドラマ化が繰り返されてきた本作は、全6巻で完結済み。意地悪を「生きがい」とする老婆の痛快な日常は、現代社会のストレスを笑い飛ばすエネルギーに満ちており、今なお色褪せない輝きを放っています。
いたずらが生きがい!『いじわるばあさん』のあらすじ
物語の主人公は、いたずらといじわるに情熱を注ぐ70代の老婆・伊知割石(いじわる・イシ)。「子供と動物には寛大」と自称しつつも、実際には子供を巻き込んで悪巧みをしたり、野良犬相手に本気で喧嘩したりと、その行動に聖域はありません。
同居する長男夫婦や孫たちはもちろん、近隣住民や訪ねてくるセールスマン、果ては家に侵入した泥棒に至るまで、石のターゲットは全方位に及びます。1話完結の4コマ形式でテンポ良く繰り広げられるのは、常識もコンプライアンスも軽々と飛び越える「本気のいじわる」の数々。平穏な日常に波風を立てまくる彼女のパワーに、読んでいるこちらまで巻き込まれていくような、エネルギッシュな騒動が描かれます。
毒気たっぷり!『いじわるばあさん』3つの見どころ
「いい人」ばかりじゃない!人間の本音を突く鋭い風刺
『サザエさん』が「良き昭和の家族像」を描いた光の作品なら、本作はその裏側にある人間の「業」や「本音」をさらけ出した影の名作です。綺麗事だけでは済まない世の中の矛盾を、石ばあさんが容赦なく突く様子は痛快そのもの。長谷川町子の卓越した人間観察眼が光る、大人のためのエンターテインメントと言えます。
予測不能なオチのバリエーション
単に意地悪をして終わりではありません。石の仕掛けた罠が回り回って自分に返ってきたり、悪意100%の行動がなぜか人助けにつながって感謝されてしまったりと、オチの切れ味は抜群です。読者の予想を裏切る展開の数々は、4コマ漫画としての完成度の高さを物語っています。
閻魔大王も逃げ出す!?75歳の圧倒的バイタリティ
75歳にしてマンホールの蓋を軽々と持ち上げる怪力を持ち、そのバイタリティは人間界に留まりません。あの世の閻魔大王や鬼たちさえも持て余し、タジタジにさせてしまうほどの強烈なキャラクター性は圧巻です。老いてなお盛んすぎる彼女の姿を見ていると、不思議と元気が湧いてきます。
ストレス社会の清涼剤!『いじわるばあさん』はこんな人におすすめ
ブラックユーモアやシュールな笑いで発散したい人
現代のコンプライアンス重視の空気感に少し疲れてしまった方にこそおすすめです。倫理観を無視して我が道を行く石の姿は、ある種の清涼剤。日常の些細な不満を笑い飛ばす、良質なデトックス体験となるでしょう。
長谷川町子の「裏の顔」を知りたいファン
温かいホームドラマのイメージが強い著者が、実は持っていた鋭い毒気とロックな精神性。そのギャップを楽しみたい方には必読の書です。著者のクリエイティビティの深淵に触れることができます。
完結済みの名作を電子書籍で一気読みしたい人
全6巻というボリュームは、休日のまとめ読みに最適です。復刻版や電子書籍では、当時のカラー原稿の色彩も鮮やかに楽しめます。昭和の懐かしい空気感と共に、普遍的な笑いを一気に堪能してみてはいかがでしょうか。