「斜め上」の語源となった伝説的SF『レベルE』とは?
『HUNTER×HUNTER』や『幽☆遊☆白書』で知られる鬼才・冨樫義博が、週刊連載でありながらアシスタントを使わずにほぼ一人で描き上げた伝説的SF漫画です。全3巻(文庫版全2巻)というコンパクトな構成ながら、その圧倒的な完成度と密度の高さから、ファンの間では「冨樫義博の最高純度の才能が堪能できる作品」として高く評価されています。
現代語として定着した「斜め上」という言葉の語源ともなった本作は、予測不能な展開と知的なユーモアが凝縮された、完結済み名作の金字塔です。
山形に宇宙人が襲来?『レベルE』のあらすじと「バカ王子」の企み
物語の舞台は山形県。高校進学を機に一人暮らしを始めることになった熱血球児・筒井雪隆(つつい ゆきたか)が、引っ越し先の部屋に入ると、そこには自称「宇宙人」の謎の男が勝手に生活していました。
この男こそ、全宇宙から恐れられるドグラ星の第一王子(通称:バカ王子)。彼は天才的な頭脳と誰もが見惚れる美貌を持ちながら、その性格は「宇宙規模で最悪」。「いかにして民衆を苦しめず、かつ死なない程度に苦しめるか」を生きがいにしています。
雪隆は、地球の常識を平然と無視して暴走する王子の「暇つぶし」に巻き込まれ、平穏な日常を奪われていきます。王子が地球に持ち込むトラブルは、小学生を無理やりヒーローに改造したり、不気味なエイリアンを出現させたりと、SF・ホラー・ミステリーのジャンルを縦横無尽に駆け巡ります。
鬼才・冨樫義博の作家性が爆発する3つの魅力
- 「斜め上」を行く予測不能なシナリオ 本作の最大の魅力は、読者の予想を鮮やかに裏切る構成にあります。「こうなるだろう」という王道のパターンをあえて提示し、その前提を根底から覆す展開は圧巻。読み進めるほどに、作者の緻密な計算の上で踊らされる知的な快感を味わえます。
- アシスタントなしで描かれた緻密な描写 背景や異形のクリーチャー、細かなモブキャラクターに至るまで、冨樫義博本人がペンを入れているため、画面の隅々まで濃密な作家性が充満しています。リアルさと不気味さが同居した独特の画力、そして膨大なテキスト量によって、まるで映画を鑑賞しているかのような没入感を得られます。
- 唯一無二のトリックスター「バカ王子」 主人公であるバカ王子は、正義の味方でも悪の魔王でもありません。ただ純粋に「退屈」を嫌い、自らの天才的な頭脳を「他人への嫌がらせ」に全振りするキャラクターです。その徹底した偏屈ぶりは、物語に奇妙な緊張感と、どこか憎めない愛嬌を与えています。
全3巻で完結!『レベルE』が今なお愛される理由
- 冨樫義博作品の「エッセンス」を短時間で堪能できる 『HUNTER×HUNTER』などに見られる「ルールの裏をかく心理戦」や「複雑な設定の妙」が、全3巻の中に濃縮還元されています。長編作品を読み始めるのはハードルが高いという方でも、本作なら短時間で最高峰のエンターテインメントに触れることが可能です。
- 知的な伏線回収とどんでん返しのカタルシス 単なるギャグ漫画に留まらず、張り巡らされた伏線が見事に回収されるミステリー的な側面も持ち合わせています。最後まで読み終えた時、それまでの物語の見え方が一変するような構成の妙は、まさに天才の仕事と言えるでしょう。
- 「完結済み」という安心感 最初から最後まで一切の妥協なく描き切られ、完璧なフィナーレを迎えています。「斜め上」という言葉が辞書に掲載されるなど、再び注目を集めている今こそ、そのオリジンを体験する絶好の機会です。