ラブコメの巨匠・あだち充が描く“幻”のヒーロー漫画『愛の戦士レインボーマン』
『タッチ』や『H2』で知られる国民的漫画家・あだち充。彼が1980年代のラブコメブームを巻き起こす遥か前、1972年のデビュー間もない時期に手がけた特撮コミカライズ作品をご存知でしょうか。それが『愛の戦士レインボーマン』です。
長らく単行本の入手が困難で、ファンの間では「幻の作品」として語り継がれてきました。現在の柔らかな作風とは一線を画す、劇画調のハードなアクションと、若き日のあだち充が注ぎ込んだ熱量の高さは圧巻です。電子書籍での復刻により、ようやくその全貌に触れることができるようになった、漫画史的にも極めて貴重な一作を紹介します。
あらすじ:孤独なヒーロー・ヤマトタケシ対「死ね死ね団」
物語の主人公は、アマチュアレスリングで挫折を味わった青年・ヤマトタケシ。彼は足の不自由な妹の治療費を稼ぐため、インドの山奥に住む聖者ダイバ・ダッタに弟子入りを志願します。過酷な修行の末、タケシは奇跡のヨガの秘術を授かり、超人的な力を手に入れました。
しかし、帰国した彼を待ち受けていたのは、平和な日常ではありませんでした。そこには、第二次世界大戦の怨恨から「日本人をこの世から根絶やしにする」と誓う恐るべき秘密結社「死ね死ね団」の魔手が迫っていたのです。タケシは愛と正義のため、そして祖国日本を守るため、誰にも正体を明かせない孤独なヒーロー「レインボーマン」として、凄惨な戦いに身を投じます。
『愛の戦士レインボーマン』が読み継がれる3つの理由
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あだち充のルーツを感じさせる「劇画タッチ」 現在のあだち充作品の代名詞とも言える「行間を読むような空気感」や「柔らかなキャラクター」とは対照的に、本作では汗と血にまみれたシリアスな描写が徹底されています。骨太でキレのある格闘シーンや、鬼気迫る表情で敵に対峙する主人公の姿は、まさに劇画そのもの。「若き日の天才が、全く異なるベクトルで才能を爆発させていた」という事実は、ファンにとって新鮮な驚きとなるはずです。
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敵組織「死ね死ね団」が突きつける重厚なテーマ 本作に登場する悪の組織「死ね死ね団」は、単なる勧善懲悪の敵役ではありません。その構成員は、かつて日本軍によって被害を受けた外国人たちで構成されており、「日本への憎悪」という極めて重く、現実的な動機を持っています。彼らが実行する作戦も、偽札を大量にばら撒いてハイパーインフレを起こし日本経済を崩壊させる「M作戦」など、子供向け作品の枠を超えた社会派な恐怖を描き出しています。
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現代に通じる戦略的な「7つの化身」 レインボーマン最大の特徴は、その名の通り「七色の化身」に変身できることです。「月・火・水・木・金・土・日」の曜日に対応した7つの姿(ダッシュ1〜7)は、それぞれ「遠距離攻撃が得意」「水中戦に特化」「土に潜る」といった固有の能力を持っています。状況に応じて最適な姿に変身し、知恵と能力を駆使して強大な敵に立ち向かう戦略的なバトルは、現代のヒーロー作品におけるフォームチェンジの先駆けとも言える斬新な設定です。
今こそ読むべき「幻」のあだち充作品
本作は、以下のような方に特におすすめです。
- あだち充の作家性を深く知りたい方 「青春野球漫画」の巨匠というイメージを覆す、初期ならではの荒削りながらも圧倒的な情熱が詰まった本作は、あだち充を語る上で避けては通れない歴史的なミッシングリンクと言えます。
- 昭和のダークで重厚なストーリーに浸りたい方 正義とは何か、国を守るとはどういうことか。「死ね死ね団」というあまりに重い敵を通して描かれるテーマ性は、大人の鑑賞に十分に耐えうる深みを持っています。
著者の意向などにより長らく入手困難とされてきましたが、現在は電子書籍で読むことが可能です。漫画史に残る「若き日の挑戦」を、ぜひその目で確かめてみてください。