『マブラヴ』小説版:伝説のPCゲームを原作者自らが完全ノベライズ
恋愛アドベンチャーゲームの金字塔として名高い『マブラヴ』。その原作シナリオを手掛けた北側寒囲氏自らが執筆した、全7巻(集英社スーパーダッシュ文庫)の完全ノベライズ作品です。
本作はゲーム本編における『EXTRA(日常)』編から『UNLIMITED(非日常)』編までの物語を網羅しています。『進撃の巨人』の作者・諫山創氏にも多大な影響を与えたとされる「世界系」の重要作であり、単なるゲームのノベライズという枠には収まらない、圧倒的な熱量と文学的価値を持つシリーズです。
あらすじ:平和な学園生活から絶望の戦場へ…白銀武を待ち受ける運命
物語の幕開けは、あまりにも「典型的」なドタバタ学園ラブコメディです。主人公・白銀武(しろがねたける)は、幼馴染やクラスメイトたちと騒がしくも楽しい日々を送っていました。この平和が永遠に続くと、誰もが信じて疑わない幸福な時間。しかし、ある朝目覚めると、世界は一変していました。
武が立っていたのは、見慣れたはずの街が廃墟と化した並行世界。そこは、異星起源種「BETA」の侵略によって人類が滅亡の危機に瀕している絶望的な現実でした。当初はドッキリや夢を疑う武でしたが、やがて突きつけられるのは容赦のない死と破壊。かつてのクラスメイトと同じ顔を持ちながら、戦術機と呼ばれる人型兵器を操る兵士として生きる仲間たちと共に、武は人類の存亡をかけた戦いへと身を投じていきます。平和ボケした少年が、極限状態の中で精神的に追い詰められながらも、「生きる」ために成長していく姿が胸を打ちます。
『マブラヴ』が『進撃の巨人』作者にも影響を与えた3つの理由
-
日常崩壊のカタルシス 本作最大の特徴は、前半の徹底した「平和な日常」と、後半の「絶望的な戦場」との凄まじい落差です。「ただのギャルゲー」だと思って読み進めると、その認識は大きく覆されます。あまりに容赦のない世界観の転換と、そこから生まれる圧倒的な喪失感は、読者に深い衝撃とカタルシスを同時に与えます。
-
「あい」と「ゆうき」の物語 絶望的な状況下で試されるのは、極限の人間ドラマです。可愛らしいヒロインのデザインと、ハードなSF・ミリタリー設定とのギャップが、かえって物語の悲壮感を際立たせます。BETAという抗えない脅威を前に、それでも前を向こうとする「あい」と「ゆうき」の物語は、読む者の心を揺さぶります。
-
原作者執筆ならではの深度 ゲーム本編では描ききれなかった詳細な心理描写や設定の補完が含まれている点は、小説版ならではの魅力です。伝説の続編『マブラヴ オルタネイティヴ』へと繋がる、決して避けては通れない「敗北」と「希望」の序章として、ファンならずとも一読の価値があるクオリティに仕上がっています。
ループものやハードSF好きに捧ぐ!『マブラヴ』はこんな人におすすめ
- 『シュタインズ・ゲート』や『ひぐらし』が好きな人 当たり前だった平和な日常が音を立てて崩れ去るサスペンスや、世界の構造に隠された謎に迫る展開が好きな方に最適です。
- ハードな絶望とカタルシスを求める人 『進撃の巨人』のような、人類存亡をかけた極限状態での群像劇や、容赦のない展開を求めている方には、間違いなく刺さる作品です。
- 伝説の「原点」を知りたい人 2024年のSwitch版発売などで再評価熱が高まっている本作。「プレイする時間は取れないが、伝説の物語を体験したい」という活字派の方にこそ、手に取っていただきたいシリーズです。