『なるたる』とは?漫画史に残る「鬱展開」の金字塔
「未来に贈るメルヘン」というあまりに皮肉なキャッチコピーで知られる『なるたる』は、『ぼくらの』でも知られる鬼頭莫宏によるSF漫画です。一見すると少年少女と不思議な生き物の交流を描いたファンタジーのように見えますが、その実は漫画史において「鬱漫画」「トラウマ作品」としてその名を轟かせる、極めて衝撃的な作品です。全12巻(新装版は全8巻)ですでに完結しており、その可愛らしい絵柄からは想像もつかない、救いのない世界観と徹底された絶望が描かれます。
あらすじ:玉依シイナと「ホシ丸」の出会い、そして世界の終わり
小学6年生の玉依シイナは、夏休みに訪れた祖父母の住む島で、星の形をした不思議な生物「ホシ丸」と出会います。ホシ丸は「竜の子」と呼ばれる存在で、特定の少年少女とリンクし、常人離れした能力を発揮する力を持っていました。
シイナとホシ丸の出会いは牧歌的で、空を飛ぶシーンなどは爽快感に満ちています。しかし、物語はシイナが他の「竜の子」のリンク者たちと遭遇することで一変します。彼らは無邪気な子供であるがゆえに、残酷な論理でその力を振るい始めます。いじめ、報復、そして「世界のリセット」。個人的な感情が殺戮へと直結していく中、シイナもまた、逃れられない戦いの渦中へと巻き込まれていきます。
『なるたる』が読者の精神を削る3つの衝撃
-
可愛らしい絵柄と凄惨な暴力のギャップ 本作が「表紙詐欺」と語り継がれる最大の理由です。ポップで愛らしいキャラクターデザインでありながら、作中で描かれるのは人体切断や溶解といった極めてグロテスクな描写です。その視覚的な落差は、読者に強烈な認知的不協和と恐怖を与えます。
-
鬼頭莫宏独特の冷徹な筆致 著者は、人間の暗部や狂気を、感情を交えずに淡々と描きます。登場人物がどれほど悲惨な目に遭おうとも、カメラは冷ややかに事実だけを映し出すかのような独特のスタイルが貫かれており、それがかえって「死」や「痛み」のリアリティを増幅させます。
-
「セカイ系」の極北にあるスケール感 本作は、少年少女の個人的な悩みや人間関係が、そのまま世界の存亡に直結する「セカイ系」の作品としても評価されています。子供たちの未熟で純粋な悪意が、強大な力(竜の子)を通じて世界そのものを崩壊させていく様は、圧巻のスケールと絶望感をもたらします。
この絶望に耐えられるか?おすすめの読者層
-
見た目と内容のギャップを楽しめる人 『魔法少女まどか☆マギカ』や同作者の『ぼくらの』のように、可愛らしいビジュアルでハードかつ残酷な展開が繰り広げられる作品に惹かれる人には、原点にして頂点とも言える本作が刺さるはずです。
-
心に深い爪痕を残す作品を求めている人 予定調和なハッピーエンドでは物足りず、読み終わった後にしばらく立ち直れないほどの衝撃や、深い思索を促すような強烈な読書体験を求めている人におすすめです。
-
伝説のトラウマシーンを確かめたい人 ネット上で長く語り継がれる「のり夫」の悲劇など、なぜこの作品がこれほどまでに読者の心にトラウマを植え付けたのか。その真実と、物語の結末を自分の目で確かめたい考察好きなSFファンには必読の書です。