『虹色とうがらし』とは?あだち充が描く「野球なし」の隠れた名作SF時代劇
『タッチ』や『H2』など、青春野球漫画で知られるあだち充。その数ある作品の中で、野球が一切登場しない異色のファンタジー作品が存在します。それが、全11巻で完結済みのSF時代劇『虹色とうがらし』です。
いつもの「あだち節」はそのままに、不思議な世界観で描かれる冒険活劇。「野球を知らなくても楽しめるあだち充作品」として評価が高く、2021年には舞台化もされました。その独自の魅力を紐解きます。
七人の異母兄弟が旅する物語のあらすじ
舞台は未来の地球によく似た星にある「江戸」。長屋で暮らすのは、それぞれ母親の違う7人の異母兄弟たちです。彼らはある日、それぞれの故郷に眠る母の墓参りをするため、兄弟揃って長い旅に出ることになります。
しかし、それは単なる家族旅行ではありませんでした。行く先々でなぜか命を狙われる兄弟たち。その背景には、彼らの出生に隠された、時の将軍家に関わる秘密が潜んでいました。個性豊かな7人が織りなす、旅と絆の物語です。
ここが面白い!3つの注目ポイント
野球がなくても「あだち充」全開 本作に野球ボールは登場しませんが、独特の「間」や軽妙なセリフ回し、絶妙な距離感の人間模様は健在です。スポーツという縛りがない分、作者特有の飄々としたユーモアや、言葉に頼らない心理描写がファンタジー世界で自由に展開されており、その作家性を存分に味わえます。
7人兄弟の絆と家族ドラマ 性格も育ちもバラバラな7人の異母兄弟たち。道中では些細なことで喧嘩もしますが、いざという時は互いを守り抜きます。不器用ながらも深まっていく家族の絆や、それぞれの母への想いが交錯するドラマは温かく、胸を打つシーンも少なくありません。
殺陣×ミステリーの緊張感 日常描写の中に、鋭い剣劇アクションとシリアスな出生の謎がバランスよく差し込まれます。刺客との戦いや謎の浪人との因縁、徐々に明らかになる「世界の真実」。ミステリー要素が物語を牽引し、最後までページをめくる手が止まらなくなります。
全11巻で完結!こんな人におすすめ
スポーツ漫画は未読のあだち充ファン 「あだち充の絵や空気感は好きだけど、野球のルールがわからなくて」という方にこそ読んでほしい一作です。青春スポーツものの王道から離れた設定だからこそ、新鮮な物語体験が待っています。
SF×時代劇の設定が好きな人 「からくり長屋」や「未来の江戸」といった設定の通り、時代劇の様式美とSF要素が融合しています。チャンバラ活劇と不思議なガジェットが同居する独特の世界観は、『銀魂』などの設定が好きな方の心にも響くはずです。
週末に一気読みしたい人 全11巻というボリュームは、長すぎず短すぎず、週末のまとめ読みに最適です。物語はきれいに完結しており、中だるみすることなくエンディングまで駆け抜けるため、読後の満足感が高い作品です。