『夢みる7月猫』とは? 竹本泉の原点が詰まった初期傑作短編集
『あずまんが大王』のあずまきよひこ氏も敬愛する漫画家・竹本泉氏のデビュー作を含む、初期の傑作短編集です。SFやファンタジー色が強い後年の代表作とは一味違い、本作では「普通の」人間たちが織りなす等身大のラブコメディや、日常の機微が丁寧に描かれています。竹本作品特有の心地よい空気感はそのままに、作家としての原点や多様な側面を垣間見ることができる、ファンにとっても味わい深い一冊です。
あらすじ:猫嫌いのベストセラー作家と記者の奇妙な同居生活
主人公のハートレーは本職の推理小説ではなく、ふざけ半分で書いた「猫の本」が大ベストセラーになってしまった作家です。実は大の猫嫌いである彼は、世間の「猫好き作家」というイメージと、押し寄せる猫ブームから逃れるため、息子と共に田舎での隠遁生活を選びます。
そんなある日、雑誌記者のマリーが取材に訪れます。彼女もまた、実は「猫嫌い」でありながら、なぜか家事が大好きという一風変わった女性でした。ひょんなことからマリーはハートレー家に住み込みで働くことになり、秘密を共有する二人の奇妙で穏やかな共同生活が始まります。
『夢みる7月猫』がファンに愛される3つの理由
「猫嫌いの猫作家」という皮肉な設定が生むユーモア 主人公たちが猫を嫌えば嫌うほど、周囲は「猫好き」だと勘違いして盛り上がってしまう展開が秀逸です。猫そのものの可愛さではなく、「猫に振り回される人間」の滑稽さや、嫌いだからこそ見えてくる独特の視点が、クスッと笑える上質なコメディを生み出しています。
初期から完成されていた「竹本泉ワールド」独特の間 デビュー当時の作品でありながら、竹本泉作品の代名詞ともいえる、力が抜けるような独特の台詞回しや「間(ま)」はすでに完成されています。激しい感情のぶつかり合いではなく、淡々としつつも温かみのある会話劇は、読むだけで肩の力が抜けるような不思議な癒やしを与えてくれます。
幻の未発表作も収録!全1巻で味わう贅沢な短編集 表題作の『夢みる7月猫』だけでなく、幻の未発表作と言われる「米太郎ちゃん愛してる」や、「べっかんこ3部作」など、バラエティ豊かな初期短編が多数収録されています。それぞれ異なる味わいの物語が1冊に凝縮されており、竹本泉という作家の引き出しの多さを存分に楽しめます。
『夢みる7月猫』はこんな人におすすめ
竹本泉ワールドの原点に触れたい人 独特の「脱力感」や、心地よい会話のリズムなど、竹本作品の根幹にある魅力が詰まっています。
激しい展開に疲れ、癒やしを求めている人 殺人事件も世界の危機も訪れない、優しくて少しじれったい人間関係に、心穏やかに浸ることができます。
サクッと読める完結作を探している人 全1巻できれいにまとまっているため、移動中や寝る前のちょっとしたリラックスタイムに最適です。