『ゴクウ』とは? 寺沢武一が描く予言的サイバーパンク
『コブラ』で世界的な人気を博すSF漫画の巨匠・寺沢武一が、1987年に発表したハードボイルド・アクションの傑作です。全3〜4巻(※版により異なる)というコンパクトな構成ながら、その中身は濃密。特筆すべきは、本作が描いたテクノロジー描写の先見性です。インターネットやスマートフォンが普及する遥か以前に、現代の「IoT社会」を鮮烈に予見した設定は、今改めて評価されるべき魅力を放っています。OVA化もされた本作は、サイバーパンクの金字塔として、時代を超えて読み継がれるべき一作です。
あらすじ:2014年の東京、最強の左目を持つ探偵・風林寺悟空
物語の舞台は、近未来の2014年、東京。元刑事であり、現在は私立探偵を営む男・風林寺悟空(ふうりんじ ごくう)が主人公です。彼はかつてある事件により仲間を失い、自らも左目を失うという悲劇に見舞われました。自殺寸前まで追い込まれた彼が、謎の存在から授かったのは、世界のあらゆるコンピュータ・ネットワークにアクセス可能な最強の義眼「神の目」と、伸縮自在の武器「如意棒」。
悟空はこの人知を超えた能力を駆使し、都市の闇に潜むハイテク犯罪や、凶悪な組織へと立ち向かいます。電子機器を自在に操る「神の目」の力と、自身の肉体を駆使したスタイリッシュなアクション、そして寺沢武一作品特有のダンディズムが交錯する、極上のサイバーパンク・ストーリーが展開されます。
今こそ読むべき『ゴクウ』3つの見どころ
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30年以上前に「スマホ・IoT社会」を予言 本作最大の特徴は、主人公の左目「神の目」の能力です。あらゆるコンピュータにリンクし、信号機から軍事衛星まで自在に制御するその姿は、まさに現代のIoT(モノのインターネット)社会そのもの。1987年というインターネット黎明期に、ネットワーク社会の光と影をここまで具体的に描いていた先見性には驚かされます。現代人が読むからこそ、「この機能、今のスマホと同じだ」という発見があり、SFとしての切れ味をよりリアルに感じられるはずです。
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『コブラ』譲りのハードボイルドな美学 寺沢武一作品の代名詞とも言える、ウィットに富んだジョークや軽妙な掛け合いは本作でも健在です。しかし『コブラ』と比較すると、よりハードでアダルト、そしてシリアスな雰囲気が漂います。孤独なヒーローが背負う哀愁や、退廃的な近未来都市の描写は、大人のためのエンターテインメントとして洗練されています。「男が惚れる男」を描かせたら右に出る者はいない、寺沢美学の真骨頂を味わえます。
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サクッと読めて密度が濃い「完結済み」作品 長編化する漫画が多い中で、本作は全3〜4巻程度で完結しています。しかし、その読後感は長編映画を見終わったかのような重厚な満足感があります。無駄な引き伸ばしが一切なく、エピソードの一つ一つが極限まで研ぎ澄まされているため、週末の一気読みや、短い時間で濃厚な物語を摂取したい時に最適です。
『ゴクウ』はこんな人におすすめ
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サイバーパンク・近未来SF好き 川尻善昭監督によるマッドハウス制作のOVAも高く評価されている通り、本作の世界観は硬派なSFファンを唸らせる完成度です。『ブレードランナー』や『攻殻機動隊』などが好きな方なら、間違いなく没頭できる空気がここにあります。
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寺沢武一ファン・『コブラ』読者 『コブラ』で見られるような軽口を叩きながらも、決める時は決める主人公の姿は、ファンならニヤリとすること請け合いです。よりダークな側面から描かれる「寺沢イズム」を堪能したい方におすすめです。
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「答え合わせ」を楽しみたい人 作中の舞台設定である2014年は、現実世界では既に過去となりました。1987年当時に想像された「未来の2014年」と「実際の現代」を比較し、何が当たり、何が違っていたのか。その答え合わせを楽しむという、今だからこそできる贅沢な読み方が可能です。