『苺ましまろ』:「かわいいは、正義!」を生んだシュールな日常系コメディ
「かわいいは、正義!」というキャッチコピーで広く知られる、ばらスィー先生による日常系コメディです。KADOKAWAより発行され、アニメやゲームなどのメディアミックスも展開されました。一見すると愛らしい少女たちのほのぼのとした物語に見えますが、その実態は、かわいらしい絵柄からは想像もつかないほどシュールでブラックな笑いに満ちた、中毒性の高い作品です。既刊9巻と巻数は多くありませんが、非常にゆったりとした連載ペースゆえに一冊の密度が濃く、何度読み返しても発見がある独自の存在感を放っています。
舞台は浜松、事件は起きない日常
物語の舞台は静岡県浜松市。しっかり者の小学6年生・千佳と、その姉でタバコと酒を愛する破天荒な伸恵、そして彼女たちの家に集まる近所の個性的な小学生たちが繰り広げる日常を描いています。
世界を救うような大きな事件は何も起きません。しかし、平和な日常を揺るがすトラブルメーカー・松岡美羽の存在が、物語に予測不能な展開をもたらします。彼女の奔放すぎるボケと、それに対して容赦なく繰り出される伸恵や千佳の鋭いツッコミ(時に物理的な制裁を含む)が、絶妙なテンポと独特の「間」を生み出しています。ただかわいいだけではない、シュールな会話劇は一度ハマると抜け出せない魅力があります。
萌えと毒気、そしてサブカルチャーへのこだわり
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ギャップが癖になる「毒気」と「シュール」 本作の大きな魅力は、洗練されたかわいらしいキャラクターデザインと、そこから繰り出される毒気たっぷりの言動とのギャップにあります。「萌え」を期待して読むと、良い意味で予想を裏切られるでしょう。シュールな笑いと計算された間の面白さは、単なるキャラクター漫画の枠を超えた完成度です。
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マニアを唸らせる「サブカル要素」 作者であるばらスィー先生の趣味が色濃く反映されている点も見逃せません。登場人物たちが身につけるこだわりのストリートファッションや、背景にさりげなく登場するAphex TwinやRadioheadといった洋楽ネタは、音楽ファンやサブカルチャー好きの心をくすぐります。細部まで描き込まれたリアルな背景描写も含め、非常におしゃれな世界観が構築されています。
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色褪せない個性的なキャラクター 後の日常系作品にも影響を与えたキャラクターたちの個性は強烈です。特に「ウザかわいい」というジャンルを確立したとも言える松岡美羽の存在感は圧倒的です。さらに、見た目は金髪碧眼の美少女なのに中身は完全に日本人という英国少女アナ・コッポラなど、一筋縄ではいかないキャラクターたちが織りなす群像劇は、いつまでも色褪せることがありません。
『苺ましまろ』はこんな人におすすめ
- 『あずまんが大王』や『よつばと!』が好きな人 日常系コメディが持つ独特の空気感を愛しつつ、そこにもう少しピリッとしたスパイスや毒気を求めている人に最適です。
- ただの「萌え」では満足できない人 表紙のかわいらしさに惹かれつつも、中身には骨太な笑いやシュールなセンスを求めている読者であれば、間違いなく心に刺さる作品です。
- 気長に待てる「スルメ漫画」を探している人 刊行ペースは非常にゆっくりですが、その分、既刊9巻を揃えておけば、忘れた頃にやってくる新刊を待つという贅沢な楽しみ方ができます。何度読んでも面白い、スルメのような漫画を求めている方におすすめです。